古き良き時代のポケットラジオ
この機種、未だに根強い人気があるんですね。通勤用ラジオ最高傑作とも評されていたソニーのSRF-M902Vを入手しました。今日のSRF-T355まで続く通勤用ラジオの第1の完成形でしょう。メーカー希望小売価格は3%税別で10,800円で、1988年発売のSRF-M3V(定価13,800円)の後継機だそうです。移動中もFMラジオをステレオで聴きたかったのが入手した動機になります。やはりSRF-T355入手までのつなぎにしたいですね。
このラジオ、情報によれば1990年9月21日発売だったようです。兄弟機として、テレビ音声受信機能のないSRF-M901もありました。後にAMステレオ対応機種として発売されたSRF-M911のベースになったラジオのようです。
このラジオの大きな特徴はエリアコール機能になります。当時のソニーのポケットラジオはダイヤル式からデジタル式へ移行したばかりで、プリセット選局機能も付いていましたがその作業が煩わしく感じるユーザーも少なくありませんでした。これを簡略化すべく、初めから放送局を設定で呼び出せるようにしたのがエリアコール機能です。
しかし、そのエリアコール機能も全国を網羅しているとは言えず、後継機で各地の基幹都市が、後に開発されたスーパーエリアコール機能によってようやく全国の放送局が網羅されることになりました。このスーパーエリアコールは後に、中継局まで細かに設定できるようになるなどの進化を遂げています。
スエードタッチのソフトケースから取り出してみると状態は極上! とても四半世紀使われたラジオとは思えません。しかも、フロントパネルはアルミ板とバブリーな設計です。但し、全面金属製パネルでは電磁遮蔽されてしまうため、下だけ樹脂製になっています。ソニーのポケットラジオは下にAM用バーアンテナが内蔵されている機種が多かったのではないでしょうか。横幅に余裕があるので、内蔵されているバーアンテナも長そう。バーアンテナは長いほうが受信感度の面で有利になりますね。
このラジオはスピーカーを内蔵しておらず、ヘッドホン端子も今となっては特殊なミニミニ型(2.5mm径)になっていました。当時の技術では、このキツキツのスペースに3.5mm径のミニ端子を搭載する余裕がなかったのでしょう。そのため、動作チェック用の乾電池と一緒にミニミニプラグへ変換するアダプターを購入しました。当のソニーでは、アナログオーディオ用ケーブルやアクセサリー諸共撤退してしまったようで…残念な限り。現在、ソニーではHDMIケーブルしか扱っていません(参考)。
スピーカーがない上に本体が大きめなので、電池の入れ方がとてもユニーク。普通は縦に入れる乾電池は、この機種では横向きに入れます。電池蓋の出来がいい上に絶妙な固さで閉まるので、乾電池をしっかり固定できます。
発売時期が1990年と微妙なため、FM周波数が90.0MHzできっぱり区切られていてワイドFMは受信不可でした。しかしながらPLL検波を採用しているため、発売から四半世紀経ってもなおズレずに同調できます! あまりにもチューナーの特性がいいのか、強電界局はマルチパス妨害が生じてしまいましたw
さすがにポケットラジオの名機だけあって、操作性は抜群。付属のスエード調ソフトケースも操作性を損なわない程度に本体を覆ってくれています。エリアコール機能も後継機とは異なり、自分でプリセットした局と併せて選局できるのがありがたいです。今日のスーパーエリアコール機能は設定でマイプリセットと切り替える手間が生じていますから…。
このラジオ、日本製だったんですね。当時は日本市場向け製品といえば日本製が当たり前だった時代でした。しかし、その頃から既に廉価機や二流以下のメーカーは新興国で製造されるようになってしまっていました。やがてバブル崩壊後、海外への生産拠点移転は加速し、今となってはとうとう日本製ラジオといえば孤高のBCLラジオ、ICF-SW7600GRぐらいしかなくなってしまいました。
現在、ソニーは主に中国で、パナソニックはインドネシアでラジオを生産しているようです。インドネシアは今も人件費が安いようですが、中国はむしろ割高になってしまっています。ですが、中国は「世界の工場」と呼ばれているだけあって、工場で働く人の確保もしやすく大量生産に向いた立地なのかもしれません。
最近は「日本製にしても人件費がさほど変わらなくなったから」と、ホンダのスーパーカブが日本製に戻るなど、MADE IN JAPAN回帰の動きが高まっているようですが、この動きが電機メーカーにも波及してくれればなあ…。
さて、追記にて主だった操作方法を解説します。
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